漫画の話【キーチ!・キーチVS】
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キーチ!
キーチVS
絵がおっかないですが、内容は面白いものでした。
山で育った父と、海で育った母の間に生まれた染谷輝一の成長っぷり。
母が地元の占い師から「この日に産むとまたとない男らしい男に育つよ☆」と言われ、その通り産みました。
男らしいというより最初は暴れ馬でした。
ビジュアルも行動も常にブチ切れた野良の子猫みたいな幼稚園児の輝一。
そんな中、生き方を左右する出来事が次々と起こります。
最初は暴れん坊すぎるなぁ、と思ってましたが、ちゃんとした理由があって暴れているのです。
その信念は貫いたまま、小学生のキーチも恐ろしいくらいませているというか筋が通ってる。
一時期周りにいた大人が、大人特有の理不尽やダメな部分を見せざるを得ない人たちばかりだったこともあると思います。
それを支持する同年代甲斐慶一郎の登場で、どんなお偉い大人たちも手のひらで踊らされるようになります。
甲斐、やり手営業マンかなんかなんじゃないか?ってくらい頭がまわります。
と同時に、革命を起こす気概があるのです。
それもキーチを知ったことによって生まれたものだと思います。
彼らによる簡単な勧善懲悪では済まない世直し物語です。
※ネタバレ注意
最初は親バカっぷりが微笑ましくもあり度がすぎるところもあり。
最初は「父親甘すぎんだろ」と思いながら見てましたが、キーチを貶した同じ保育園の父親に対しては毅然と「謝れ!」と言います。
父親もですが、後に同居することとなる松本の父方の祖父の兄や、作品通してキーチに密着する石塚も、キーチを叱りながら一人の人間として認め、尊重しているのがこの作品の大人たちの救いです。
間違ったことは言ってないが、力の強い人たちの耳の痛いことを言うのがこの作品の面白みでもあります。
通り魔により両親が亡くなってから、ホームレス生活へ。
モモという女と出会います。
半保護者とでも言いますか。
男に入れあげているうちに子供を火事で亡くす経歴の持ち主。
なので愛おしさとか罪悪感から…?キーチの面倒を見るように。
普通の大人が子供に接するような接し方。
その愛人の哲ちゃんは、幼いキーチに他の大人が吐くような理想を並べ立てる訳ではなく、現実を伝えます。
哲ちゃんは一貫して現実主義です。
子供だからって甘えた言葉を吐かない。
彼も彼なりに子供を大人扱いしていたと思います。
モモがキーチを連れて身を寄せた伊豆の旅館の仲居、秋ポン。
かなりコアなプレイを所望する愛人がいます。
モモがそのアホみたいな愛人と失踪し、彼女がキーチを親元へ戻そうとします。
その途中で事故にあい、キーチは山へ逃亡、秋ポンは植物状態に。
彼女はキーチの幼い頃に大人の女として記憶され、後々までキーチの基本的な考え方に影響を及ぼしているような気がします。
小学生編。
問題起こしまくって長野県の松本市に転校したキーチ。
少女買春の被害者でクラスで虐められるみさと、クラスを上手いこと操る策士甲斐と出会います。
甲斐は当時からおっさんか!ってくらい口が立つ。関西弁だからなおさら。
小学生特有の流される雰囲気に喝を入れ、みさとからのSOSに応える、というか間違ってるから正すキーチ。
警察・政治家などが絡む事案なため隠蔽されたことに反旗を翻す。
甲斐の脚本と石塚の協力のもと、国会議事堂前で人気議員の買春摘発をライブ中継する、ということを成し遂げ、文字通り雷を落とし、その後に植物状態だった秋ポンを目覚めさせる奇跡。
キーチは正義と奇跡と共に、その名を世に知らしめていくのです。
キーチ!は小学生時代までの彼の話。
根本的な考え方や、それを支持する人の登場で正義を突きつけていく。
単なる勧善懲悪ではなく、子供から見た大人の利権や筋の通らなさや年齢など関係ない人間の弱さ をまざまざと描いています。
そして彼らの10年後。
キーチVSです。
あの中継で国民から支持を得たキーチと甲斐は世直し組織キーチズカンパニーを設立。
法律・制度の理不尽に叩かれた人たちの救済を行なっていっているようでした。
反国家権力じゃないのか、なぜ国が叩かなかったのか疑問でしたが、膳場というメディア王の後ろ盾もあってのことだと思います。
触らぬ神に祟りなしってやつもあるのかな。
冒頭にある、認知症の母を抱えながら働き、介護費用が嵩み、過去三ヶ月の滞納で年金が給付されず、仕事にも手が回らなくなり金が底をつき心中を図る道雄の話はまとめサイトなどでも少し前に話題になってましたね。
元の事件も概要を読んだことがあります。
現代の少子高齢化や制度の生んだ悲劇として相当なインパクトがあり、これキーチVSの話だったのか…と驚きました。
道雄はその後、中途半端なキーチ信者に助けられた末に受け入れ拒否され、反キーチになってた気がします(うろ覚え)
こちらのシリーズは国内のみならず、戦後日本の問題について触れ、日本のみならずアメリカさんも相手にしていきます。
00年代に問題になった狂牛病の問題など、時事ネタが主となって物事の本質をついていきます。
権力と金がモノを動かし正しいことを主張する声は排除される構図・コロコロ変わるメディアの一言が民衆の意識を変えかねない様子。
理不尽ながらも、私も情けない大人の端くれでしょうか「仕方ないのかな」という感想も少し出ました。
「他人事ではない」と読者含め大人たち(民衆)は焦っただろうか。
そこをズバズバ言っていくのがキーチ。
選挙で選ばれた人がちゃんとしてるか国民が監視しろ!ってところで、監視されるやつらに対し震えて眠れってのが良いね〜。
人の上に立つ以上、そのくらい危機感持つのが代表ですし、国民も忘れてやいまいか?約束を破られることに無頓着になってないか?実際に実現するのを実感してるのか?って。
エピローグにて、その点はキーチの周りの大人たちが議論していました。
帯とかに21歳童貞、日本を変えるって書いたらおそらく話題に登るんだろうなと思いますが(ゲス)そんなこと忘れるくらいに内容はシビアで軽い気持ちで読むと火傷した気分になります。
親が亡くなってからと、セックスを経験してからキーチの顔つきが変わっていってることで「彼も人間なんだな」と思えました。
潔癖で性嫌悪気味の甲斐も素直?茶化し半分で怒りながら祝ってて、このコンビやっぱええわ〜
途中から「染谷輝一の看板捨てて好き勝手に生きたらいいよ」って声も出てきますが、そうはならなかったなぁ。
おそらく、頭の良い人が読めばもっと面白い感想になったんだろうと思います。
すんません。
ただ、不正を摘発した栗田冷蔵の社長の義理の孫、ヒロくんの「結局世の中変わらないんですよ〜」がグサっときた。
あと、掲示板やツイッターの反応もすごく「ありそう」で、見透かされてる気がします。
よく感じる「年上の残した問題を年下に押し付ける」って部分に関してはとても共感できました。
※!WARNING!※
※!愚痴です!※
過疎化とか少子高齢化とか、高度経済成長期に出稼ぎした人たちが都会に居続けたり、日本の長兄が家督を継ぐって風習をダラダラ続けた結果なんじゃないの?って思います。
子供を育てるのに金がないとかも、学歴社会、無駄な大学の乱立、正直誰でも入れる大学に入ったやつが親の脛をかじり出席だけ四年間とって誰でもできる仕事をしてるし、それは金の無駄遣い以外に何の意味があるのか。
就職の際には「こういう僻地は不便だし人が足りない、経歴の傷にはならないから若いうちに二、三年働いて、あとは便利な都市部で働いても良いから」なんて言われました。
んまぁ、被災地である私の地元についての話だったのですが「私の故郷みたいなところで働くことが傷だと思う層が少なくともいるし、誘い文句はマイナス面の否定」であることに涙が出るほど腹を立てました。
それと同時に、その言葉を吐いたジジイたちの出身が過疎地だったりして、現住所が都市部で「お前らが手本を見せろ」と言いたかったです。
家族がいるとか田舎は嫌だとかどこに住もうが個人の自由だけど、なら「僻地で働け」とか「田舎も寂れたなぁ…」とか言わないでほしい。
経験も力も金も持つ世代は何も率先しようとしない。
田舎の嫌なところの一つ、「責任が重い」と思います。
都会みたいに「辞めてもどっかの誰かがやってくれる」状況ではないから。
しかしながら貧乏くじの押し付け合いで田舎でも「どこかの誰かがやってくれる」と知らんぷりをしているのが現状です。
確かにやってくれる人たちがいるのを見て「俺に声かからなくてよかった」と都会に帰っていく。
そして聞いている学生らも「まぁ誰かいるでしょ」「ふーん」ってな他人事。
過疎地の多い東北です。
被災地だけの問題ではなく他人事ではないことを実感せずに終わった、全く意味のないご高説でした。
不便なのも地形の他に、金欲しさに安易に建築した施設たちや、他人の故郷に田舎もんが出張って住み着き、危険なものは田舎に押し付け便利なようにどんどん充実させた都会との格差とかがあると思います。
逆に、過疎地なんて全部潰れて判で押されたような郊外の住宅に全員住めば解決なのかな?なんてヤケになったりもします。
とりあえず同じようなかっこ悪い大人にはなりたくないし、悪循環だし、文句を言えば他人が何かしてくれる所で他人任せで生きるのも嫌なので、目処を立てて地元には戻ります。
仕事の先輩も働く場所も無いが、絶対要ると思うので作りたい。
いたけど出てった。仕方ないよね。
親みたいに海で仕事をする人もいれば、少ないけど子供もいるし、何となくで住んでる人たちもいる。
そういうのも捨て、金だけ出して田舎の親の面倒を他人に見させて、自分は他人が捨てた親の面倒見ることに…なんてのは絶対嫌だ!
結局甘い汁吸ってるジジイたちのいいなりになってるみたいでムカつく〜!
ウワァァァアアアア〜〜〜〜!!!